「歌穂、お前いじめられてんのか?」


家に帰り歌穂に尋ねた。

歌穂は一瞬固まった。


「いじめられてないよ!な、なんで?」


「今日、荷物持たされてたろ?」


「あれは私がジャンケンに負けたから。
今、クラスで流行ってるんだよ」


この時の歌穂の目は泳いでいた。


「そうか。何かあったら言えよ」


その日はこれで終わったんだ。


2週間後、最近歌穂は手足に青あざを作って帰るようになった。

本人に聞いても転んだだけ、の一点張りだった。


そしてまた1週間が経った。

その頃の俺は受験を控えていて勉強に追われていた。
日に日に溜まるストレスでイライラしていた。


「お兄ちゃん、あのね・・・」


わずかな休憩でテレビを見ていた俺に歌穂が話しかけてきた。


「何?」


「えっと…あの・・・」


「すぐ話せないんだったらあとにしてくれよ。
今、勉強で忙しくて歌穂なんて構ってられないんだよ!」


俺はつい声を荒らげてしまった。

受験のストレスを歌穂にぶつけても意味ないのに。