幸恋‐ユキコイ‐

「心配かけてごめんなさい」


「いいのよ。生きててよかった」


お母さんは私の手を強く握った。

お母さんの目の下にはクマが出来ていた。
ずっと寝ずに看ててくれたんだ…

私は心配かけまいとニコッと笑った。


「奏太くんも凄く心配してたのよ。
彼にも連絡してくるからゆっくり休んでて」


お母さんは部屋から出て行った。

また、奏太に心配かけちゃった…
また、悲しませちゃった。


私は目を閉じてさっきの夢を思い返した。


『時間だよ』


口調は優しいのに声色はすごく怖く感じた。

私にはあと少ししか時間が無いの?
もうすぐ死ぬの?

あと少しの間、私には何が出来るのかな?


とにかく今は奏太に会いたいよ…


私は手を合わせて握りしめた。
そして指輪がはまってないことに気が付く。

本当は寝てた方がいいんだろうけど…

私は体を起こし指輪を探した。


指輪はベッド脇の棚に置いてあった。