幸恋‐ユキコイ‐

「・・・・きみっ…幸未っ!」


誰かに名前を呼ばれてゆっくり瞼を開ける。
ハッキリしない意識の中、ここが病院なのだと思った。


「今、先生呼んだから!」


「お…かあ…さ・・・」


お母さんが涙声で私に話しかける。

私、何でここにいるんだろう…
思い返してみても何だか思い出せない。

少ししてから後藤先生が入ってきた。


「あの…私…」


「4日前の夕方、倒れたんだ」


4日も前…
って事は丸4日眠り続けていたってことだ。


「思ったより意識がはっきりしてるね。
軽い診察をしてもいいかな?」


私はゆっくり頷いた。

すると後藤先生は聴診器を耳に付け私の胸の辺りに当てた。


「ゆっくり深呼吸して」


言われた通り深呼吸を何回か繰り返す。


「ありがとう。もういいよ。
今日はゆっくり休んで明日詳しい検査を行う」


後藤先生は病室から出て行った。
お母さんと私、2人きりになる。


「あんた、すごく危ない状態だったのよ。
もしかしたらこのまま…って言われて焦ったわ…」