幸恋‐ユキコイ‐

奏太の家に着いた。


「お邪魔します…」


小声でそう言って中へ入る。


「その辺、座って。
今、暖房付けたからすぐ暖まるよ」


「うん」


コートを脱いで私はソファに腰かけた。
ここで奏太が生活してるんだ。

そう思うとドキドキする。


「ココアでよかった?」


「うん。ありがとう」


私は奏太からマグカップを受け取り一口ココアを口へ運ぶ。


「おいしい」


「そっか。良かった!」


奏太は目を細め私の隣に座った。

部屋を見渡すとあるものに目が留まった。


「奏太ってピアノやってるの?」


この家のリビングにはピアノがあった。
新しい感じじゃなくて使い古されたような。


「それは、歌穂のだよ。
母親がピアノ教室開いてるんだ」


「え!そうなの?!」