幸恋‐ユキコイ‐

ショッピングモールから出て家路を歩く。


「クシュンッ!」


「大丈夫か?寒いよな」


くしゃみをした私に奏太は心配した顔を向ける。


「平気だよ。
でもやっぱり暗くなると寒いね」


そう言った時だった。

首に暖かいのが触れたのは。
首の辺りに手を置くとマフラーが巻かれていた。


「奏太?」


「俺、寒くないから使いなよ」


ありがと、とお礼を言ってまた歩き出す。

不意に触れた手。
寒くないなんて嘘だよね。

だって寒くなかったらこんなに手が冷たくない。

私は悩んだ末、自分から手を繋いだ。


それに気づいた奏太は何も言わずに手を繋いだまま自分のコートのポケットの中に入れた。
ポケットの中はとても暖かくて奏太の心の中みたい。


好きだよ・・・――


心の中で呟いた。