「…まだ、分かんない」


視界が上履きと四つ割の床だけを映す。

児玉くん、それは
ただの好奇心で聞いたの?


でも、そういう人じゃないよね。


……じゃあ、なんで?


胸がざわつく。


不安げに立ち尽くしていると

児玉くんが逃がさないとばかりに
あたしを壁際までゆっくり追い詰める。



逃げ場は。

顔を横に向けると

すかさず彼の腕が横におさえる。


―――駄目だ、逃げられない。



「ず、ずるい児玉くん…」


「それ、お互い様でしょ」


「なんでよっ。だって、こんな―――」


顔を上げれば、視線が交じあった。



逸らせない。


カアーッと頬に熱が集中する。

それを見て児玉くんは
不自然に視線を逸した。


自分から合わせといて何さ!


「な、ななな何っ。こ、ここれって態度で口説かれてるの?!」


違うこれでは自意識過剰じゃんっ!

口からでまかせに喋ったせいで
結果自分の発言に顔の温度が上昇した。


だけど、それは児玉くんも同じで

こんなあたしを壁に追い詰めておいて
彼の顔はやや紅く染まっていたのだ。


いっつもポーカーフェイスな
児玉くんなのに、珍しい…と


他人事のように思った。