圭(けい)に勝負を持ちかけられたのは二日前だった。

勝負という言葉がこれほど似合わない男はそうそういないだろう。


それぐらい圭は落ち着いた奴だった。

バスケにもそれがよく表れていた。


決して目立ちはしないが

メンバーひとり一人をよく見ている。

誰にパスをすればいいのか

どう動き回ればいいのか


ちゃんと分かっている。


頭のいいやつだと思った。

それが児玉圭の最初の印象で

それは今も変わっていない。



「そう、勝負」


「は、え、なんで?
俺なんか圭にした?」


「や、ただの自己満」


「なになに一つも分かんない」


「三宅に勝たないと意味がない」


「え。なんで?」


「三宅」


圭は俺の名を呼んでから
意を決したようにボールを手に持った。


「俺が勝ったら、三宅に
遠慮せず森さんをもらうよ」


「はあ?!」


前置きもなくいきなりそう言われ俺は心底吃驚した。


なんでお前の口から薫が出るの?

え、すきなの?
圭も? 薫が?

ババーッと頭の中で事を整理すると、だんだん熱いものが腹の底から湧いてきた。



ふざけんな。
誰がお前なんかにやるか。