「ワタシは大貴が藍を好きになったワケ、分かってたケド」





遥が柔らかい顔で笑う。






「どんなワケ??」





「藍の宝塚の男役みたいなトコに惚れたんでしょ??」





遥がケタケタ笑いながら答える。





・・・・・・・・まぁ、確かに藍は男前だけど。





「・・・・・・何ソレ」





「入社したての時さ、藍に言われた事が今も忘れらんなくてさ。 もう、男役トップスター並のカッコ良さだったんだよ、藍」





遥が、何かを思い出しては嬉しそうに微笑んだ。






「聞かせてよ、その話」





「入社して間もない時にね、ワタシのぶりっ子が目障りって言われて何人かの女子社員に囲まれた事があってさ。 そん時に藍が颯爽と現れて『ワタシ、理系なんでちょっと良く分からないんですけど、ぶりっ子と外面がイイ人の違いって何なんですかね??』って女子社員に問いかけはじめてさ」






遥が、何とも藍らしいエピソードを語り出す。






「『もし、本来の自分を出していないからイラつくって話だと、化粧も詐欺だし、友達が遊びに来るからって部屋を掃除するのもダメって事ですよね?? 本来の自分を出してないわけだから。 デートにオシャレもしないで部屋着で行けって事になりますよね??』って。 ただ、藍はワタシを助けようとして言ったんじゃなくて、本当に疑問だったみたいでさ」






藍が淡々と喋る姿が目に浮かんで笑えた。






「その話聞いて、益々藍の事好きになったわ、オレ」





遥に笑いかけると、遥が『ニヤッ』と笑い返した。





「ウチラも飲みに行こっか。 あの2人の後付けようよ」





「だな、追跡しようぜ」





追跡という名の尾行。 今度は藍がされる番。