善人ヲ装ウ、正直ナ悪党。







藍は目を見開いて固まっていて。






剛は、藍から唇を離すと『フッ』と息を吐きながら少し笑った。






「どうだった、オレとのキスは」






「大貴の方がイイ」





フリーズしてたくせに強気な藍。






「藍、顔真っ赤」






「・・・・・・・さっき、1杯ひっかけた」





そして、良く分からない嘘を吐く。





明らかに、藍が動揺していた。





「今日、オレとキスした事、大貴に言う??」






剛は何がしたいのだろう。





藍に傍にして欲しいと言いながら、藍が自分にした事をやり返そうとしている様に見える。






「剛が勝手にしたんでしょ」






「そうだね。 『剛が急にキスしてきた』って大貴に報告する??」






意地悪と言うよりは、恨みを孕んだ笑顔を浮かべる剛。






「・・・・・・・・・・」







藍は、一瞬剛を睨むと、眉間に皺を寄せて俯いた。






そして






「・・・・・・・ごめんね、剛。 やっぱりワタシがした事は余計な事だったんだね」







視線を床に落としたまま、藍が剛に謝った。







剛の顔が、泣きそうに歪む。