声も聞こえないし、撫でてもくれていない。
なにか美味しいものをくれたこともない。

だけど、聞こえた気がする。


おいで。


呼ばれた気がする。

僕は何度か、銀色のクルマに駆け寄ってみようとしたけど、それでもやっぱりクルマは怖い。

草むらの中から、道路を眺めては諦めた。

オンナのところに行くには、大きな大きな道路を渡らなきゃいけないんだけど、僕にはその道を歩ける自信がなかった。

1度、他のクルマに大きな音を鳴らされて尻尾が逆立ったことがある。

それが怖くて2回目はできなかった。

その代わり、草むらからずっとオンナに話しかけていた。


にゃー
ねぇ、僕を撫でて