「あ―――っ……ムカつく……」



「おい、勇吾。そんなイライラすんなよな」



月曜日の朝、教室に行くまでにある階段の壁を殴った俺に颯希が言った。



「……別に、イライラしてねぇーし」



「さっき“ムカつく”って言ったくせに……」



たしかに、イライラしてる。
すっげぇしてる。



“アイツ”のせいだ。



心瑠の幼なじみの、藤堂蒼空。



「アイツ、ほんとなんなんだよ……」



「アイツって幼なじみ?」



「あぁ」



心瑠はアイツのことをすっごく慕ってる。



昔から心瑠のことを知ってるアイツ。



俺より心瑠を知っていると思うと、腹が立って仕方ない。
金曜日、アイツに心瑠連れていかれたし。



しかも、あの金曜日の余裕な表情。



あ~~っ



「颯希、イライラするから一発殴らせろ」



「は!?」