へたれ王子



「ゆーきー」



そして保健室に入るなり、菊池先輩がそう声をかける。

保健室にはどうやら山下先生はいないらしく、一つのベッドがカーテンに隠されているのが見えた。


…あ、きっとあそこに星河先輩がいるんだ。


あたしがそう思っていると、菊池先輩は繋いでいた手を離してそのベッドに近づいて行った。

そして遠慮なくそのカーテンを全部開けると、まだ寝ているらしい星河先輩に言う。



「友希、茉友ちゃんが迎えに来たよ」



菊池先輩がそう言うと、星河先輩はうっすら目を開けて、言った。



「嘘つけ。お前茉友ちゃんじゃなくて菊池君でしょ」



…あ、星河先輩の視界にはあたしはまだ入っていないらしい。

星河先輩がそう言うのを聞くと、次の瞬間菊池先輩はあたしの手を引いて、星河先輩の近くに連れて来させた。



「嘘じゃないよ。ちゃんと来てくれてんだから」

「…あ、ほんとだ」



星河先輩はやっとあたしを見ると、そう言って眠そうな目をじっとあたしに向ける。


…眠そうな星河先輩が可愛い。


独りそんなことを思っていたら、ふいに星河先輩の視線が下の方に降りていって、突如あたしと菊池先輩の繋がれた手に軽くチョップを入れた。



「…ダメだよ、菊池君。茉友ちゃんに触っちゃ」