へたれ王子




はい?

あたしのお父さん?



「え、いや。別に普通ですけど…」



あたしがきょとんとしながらそう答えると、星河先輩は本当に不安そうにあたしに問いただしてくる。



「本当に!?嘘じゃない!?電話かけた瞬間、俺怒鳴られたりしないっ!?」

「え、いやいやどうしたんですか、突然。あたしのお父さんは誰にでも優しい人ですよ」



あたしはそう言って星河先輩を落ち着かせようとするけど、星河先輩は不安そうに下を向いた。


…って、もしかしてこの感じ…。

へたれな先輩が出てきちゃったんじゃ…。



そう考えるとあまり信じたくはなかったけど、星河先輩はまだ「心配だなぁ」とうつ向く。



「…そんなに心配ですか?」



あたしがそう問いかけると、星河先輩が「だって」と勢いよくあたしに言った。



「ドラマとか映画でよくあったじゃん!彼氏が彼女の家に電話したら、彼女のお父さんが出てきてさ、“お前か!うちの娘をたぶらかしてるのは!”とか言われたりすんの!」

「は、はぁ…」

「俺は、それが嫌なんだよ」



…あぁ、だからあたしが携帯持ってないって言った時、あんなに重たいため息をついたってわけね。