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あたしの目の前には今、まさに“あり得ない”光景が広がっています。



「えっと、茉友ちゃん。家まで送るよ」

「えっ」



星河先輩に告白をして、なんとまさかのOKを貰えた直後、あたしは夢を見てるんじゃないかと思った。

しかも廊下にいるはずのクラスの女子達の騒ぎ声も聞こえなくなったし、空き教室を出てからもそこにいた皆はあたしを見て驚いていた。

そして「せっかく恋人になったんだから」とあたしは星河先輩とこうして一緒に帰ることになったんだけど…。



「…~っ、」



なんだか凄く、緊張する。

心臓が爆発しそうだ…。


あたしは男の人と一緒に帰ったことなんてないし、だからもちろん家まで送ってもらったこともない。

あー、星河先輩をお母さんか誰かに見られたらどうしよう…っ!?


そう思いながら星河先輩の隣を微妙な距離感で歩いていると、ふいに星河先輩があたしに言った。



「…あ、そだ。茉友ちゃん」

「は、はいっ」

「携帯のアドレス教えてよ。付き合うんだから、交換しとこ?」

「!!…え、」



星河先輩にそう言われ、あたしは一瞬にしてその場に固まる。

実はあたし、



携帯なんて持っていないのだ。