菊池先輩 side


茉友ちゃんにフラれたあと、沈みまくった心で独りぼーっとしていた。

ただでさえ熱があって辛かったのに、ますます風邪が悪化したような気がする。



そう思っていると…



「!」



その時ふいに、携帯に電話がかかってきた。


…でも、無視無視。

今は誰かと話すような気分じゃない。


俺はそう思うと、寝返りを打って携帯に背を向ける。



でも…



「…~っ、」



それでもまだ全く鳴りやまない着信に、俺は携帯に手を伸ばしてやっとそれに出た。



「…もしもし、」



相手を確認しないでそれに出たら、電話の向こうで美帆ちゃんの声が聞こえてきた。



「もっしー、大将!どう?具合は、」

「!」

「ねぇ、今からお見舞いに行こうと思うんだけど、何か買ってきてほしいものとかある?」



美帆ちゃんはそう言うと、じっと俺の返事を待つ。


…お見舞い?

いや、俺は今誰かに逢いたいとか思う気分じゃな…。


そう思いながら、「いらない」って言おうと口を開いたら、返事を待てなくなったらしい美帆ちゃんはそれを遮るように言った。



「じゃあオレンジゼリーでも買ってきてあげる!待ってて、」

「いや、あの美帆ちゃ…」

「じゃーねぇー」

「…」



美帆ちゃんはそう言うと、一方的に電話を切ってしまった。


…だけど、何故か自然と笑みがこぼれる。



何だか少し、美帆ちゃんに救われた。…かも。