へたれ王子





「な、何でもないよ」




そう言って、俺は作り笑顔を浮かべる。

っつか、これも結構疲れるんだよなぁ…。

俺は一日に何回作り笑顔をしなきゃいけないんだろ…。



そう思いながらいつもの「ヘタレ」を心の奥底にし舞い込むと、みんなのイメージを崩さないためにまた本を開く。

するとその時、隣で菊池君がまた口を開いて言った。



「じゃあさ、口止めしたらいいじゃん。そんなに心配なら」

「口止め?」

「うん、保健室のあのコを」



そう言ってテーブルの上に肘をつき、真顔で俺を見遣る菊池君。



「…。どう口止めしていいかわからないよ」



俺はそう言うと、完璧な「星河友希」を偽って、また本を読み始めたのだった。