へたれ王子




田中先生はそう言うと、目の前のあたしをじっと見つめる。


…凄く真剣な目。


じゃあ、やっぱり今までの菊池先輩のあたしに対しての言動は、本当に全部演技だったってこと?


そう思ったら悲しくなって、あたしは先生の前で泣いてしまった。



「!…夏野さん」

「すみませんっ…」

「…」



別に謝る必要は全然ないんだけど、気付いたらそう謝ってしまっていた。


菊池先輩…あたし信じてたのに。

あれは、全部嘘だったんですね、


そしてしばらく田中先生に頭を撫でられながら泣いていたら、ふいにあたしの携帯が一件のメールを受信した。

こんな時間に誰だろう、と思いながらそれを見てみると…



「…菊池、先輩…」



菊池先輩からだった。

受信したメールの内容には、「ちゃんと話がしたい」という言葉が主に表示されてある。


…どうしよう。


あたしがそう思って頭を悩ませていると、田中先生が優しい笑顔で言った。



「大丈夫よ、夏野さん。菊池くんとちゃんと話してきたら?」

「でも…」

「怖いからって逃げたままじゃ良くないでしょ。自分からはっきりと別れを告げなきゃ」

「…」

「そんな男とは付き合わない方がいい。夏野さんは騙されてるんだよ」



田中先生はそう言って、あたしの顔を覗き込む。

その言葉に、あたしは泣きながら…



「…はい」



頷いてしまった。