へたれ王子





「…わかってるよ」



俺は菊池君の言葉にそう返事をすると、本に視線を落とす。

だけどこの俺が黙って本を読んでいられるはずがなくて、また菊池君の方を向いて言った。



「ねぇ、菊池君」

「うん?」

「俺さ、どうしたらいいかな?」



俺がそう聞くと、菊池君は「何が?」って聞き返してくる。


いや、わかるでしょ。

ってか、わかってよ。



「いやだから、保健室で会ったあのコのことだよ」



俺がそう言って本を閉じると、菊池君も持ってきた本を閉じて「あ~、あのコね」って言った。



「そう言えばそんなコいたなぁ」

「ひどいな、菊池君。その言い方」

「冗談だよ。しっかり覚えてるって」




菊池君の言葉に、俺は「本当か?」と若干疑いながらも話を続けた。




「俺は何より、あのコが他のコに言いふらしたりしないかが心配」