「!」
次の瞬間、そのコは俺の目の前に回り込んできて、真剣な目で俺を見上げた。
さっきまでは凄く恥ずかしそうにしていたのに、今はえらく積極的だ。
そう思いながら、俺は呆れるようにため息を吐いてそのコの横を通り過ぎようとしたけど…、
そのコは行こうとする俺の腕をぐっと掴むと、
そのまま俺の首の後ろに両腕を回して強引にキスをしてきた。
「!?…っ、」
突然の出来事に、一瞬何をされているのかわからなかった。
でも唇にあたる柔らかいその感触に気付くと、俺はすぐさまそのコを突き放す。
「…っにすんだよ!」
女のコに無理矢理キスをされたのは、初めてだ。
普通なら、ちょっと前までの俺だったらキスくらい許せてたかもしれない。
でも今は、物凄い嫌悪感。
俺がそのコから離れると、そのコはさっきまでの恥ずかしそうな様子が嘘だったかのような余裕の表情で俺に言った。
「告白の返事、前向きに考えておいてくださいね。あたし、諦めませんから」
だけど俺はそのコの言葉が聞こえていないフリをすると、速足でその場を後にした。
…信じらんねぇ、無理矢理するとか。
しかもここ、学校だし。
誰かに見られたらどうすんだよ。
もし、茉友に見られたりしたら…、
………茉友…?
だけど、俺はその時にやっと重要なことに気が付いて、歩く足を止める。
…“無理矢理”って、よくよく考えたら俺だってさっきのコのことが言えない。
俺もこの前茉友に無理矢理…キスをして、しかもそれだけじゃなくて…。
俺はその事に気付くと、そのまますぐに茉友の教室まで急いだ。

