「…大事なコ、ですか…」
俺の言葉にそのコはそう言って、しょんぼりした顔を浮かべる。
申し訳ないけど、俺は茉友のことだけが好きだから仕方ない。
ちょっと前までの俺だったらここで即告白をOKして、身体目当てで付き合ってたかもしれないけど、今はそんなことは絶対に出来ないんだ。
というか、したくない。
俺はそのコにもう一度「ごめんね」と言うと、教室に戻ろうと踵を返す。
…しかし…
「待ってください!」
「!?」
そのコに背を向けた直後、俺は突然そのコに後ろから強く抱きしめられた。
さすがにこんなことをされるとは思ってもみなくてちょっとびっくりしていたら、そのコが俺を抱きしめながら言う。
「あたし…本気で菊池先輩のことが好きなんです」
「!」
「菊池先輩じゃなきゃ嫌なんですっ…」
そのコはそう言って、より強く俺を抱きしめた。
だけど、何か嫌。
好きでもないコに、抱きしめられたくなんかない。
俺はそう思って小さくため息を吐くと、そのコの腕を半ば強引にほどく。
そしてもう一度そのコの方に振り向くと、言った。
「…その気持ちは、本当に嬉しい。ありがとう。
でも俺、今は他に付き合ってる大事な女のコがいるから、えっと…冬木さん?とは付き合えないんだよ」
俺がそう言ってそのコを見つめるけど、そのコは俯いたまま何も言わない。
でも茉友以外のコと付き合いたくないのは事実だし、このままこの場にもいたくない俺はまた教室に戻ろうとそのコに背を向ける。
すると…

