「…聞いてませんよ。何か言ってましたっけ?」
何かマズイ言葉だったような気がして、咄嗟にそう答えた。
俺がそう言うと、田中先生は安心したような笑みを浮かべる。
「…そう、ならいいんだ」
「…、」
そしてその後は田中先生と進路の話をして、俺は校舎を後にした。
でもその帰り道でも、田中先生が独り呟いていた言葉が頭から離れない。
“あーあ…せっかく忠告してあげたのに、夏野さん”
「……」
…あれは、どういう意味だろう。
でも、田中先生は確実に菊池君と茉友ちゃんを見ながらそう言っていた。
忠告?
何の忠告だ?
それに、田中先生はその独り言を俺に聞かれていないか心配していた。
ってことはマズイ言葉には間違いない。…と思う。
でも、茉友ちゃんは確か田中先生のお気に入りらしいし…。
あ~意味わかんね~。
俺は独りそう考えると、頭をぐしゃぐしゃと掻いた。
…うん。ってか、止め止め!
茉友ちゃんとはもう終わったんだ。
しかも自分から終わらしたんだし。
もう気にしないようにしよう。
俺は、これから大事な進路のことだけを考えていればいい。
俺は心にそう決めて、足早に家路へと急いだ。

