星河先輩 side
放課後。
「さぁ帰ろう」と独り階段を下りたら、そこへ偶然茉友ちゃんが俺の目の前を通りすぎた。
まさかここで茉友ちゃんに会うとは思ってもみなくて、
俺は茉友ちゃんに見つかる前にすぐに階段の陰に隠れる。
あ、危ない…びっくりした…。
ってか、何で隠れる必要があるんだよ、俺。
そうは思ってもなかなかそこから動くことは出来ず、
その間にその階段を使っている他の生徒から俺は不審な目で見られている。
「…ど、どうかした?友希、」
「いや、ちょっと…何でもない、よ。ははっ」
「?」
途中、同じクラスの女子にそう声をかけられたけど、俺は何を言えばいいのかわからず、笑って誤魔化した。
…そろそろいなくなった頃かな。
俺はそう思うと、ようやくそこから立ち上がって階段を下りる。
よし、今度こそ帰ろう。
そう思って、もう茉友ちゃんがいなくなった廊下を歩こうとした時だった。
「…?」
ふいに視界の端に、気になる姿が映った。
その人は、独り廊下で窓の外を見つめている。
…田中先生だ。
ちょうど田中先生に進路のことで話があった俺は、
「今のうちに」と先生に近づいた。
…─────しかし。
「あーあ…せっかく忠告してあげたのに、夏野さん」
次の瞬間、田中先生が小さな声で確かにそう呟いた。

