へたれ王子




友達って…さっきの女の先輩のことか。


あたしはそう思いながらちょっと複雑な気分で靴を履きかえると、

やがて菊池先輩と一緒に外に出る。

先輩は何も言わずに当たり前のようにあたしの手を優しく握ると、

そのままあたしを連れて校門へと向かっていった。


…何か、菊池先輩と一緒にいると、本当にちゃんと「付き合ってます」って感じだ。

星河先輩と付き合ってた時はあんまりそんな感じはなくて、

それなりにドキドキはしたけど、菊池先輩といる時よりこんなにドキドキしなかったな…。

その違いって何だろう。

菊池先輩が、星河先輩よりも積極的だから?


あたしが独りそう思って首を傾げていると、菊池先輩が言った。



「…ねぇ、」

「はい?」

「今度またデートしよっか」

「!」



菊池先輩はそう言うと、少し顔を赤らめるあたしを見遣る。



「は、はい…」



あたしがその顔を見られないように頬を掻きながらそう頷くと、

菊池先輩はふっと笑って「じゃあ、決まりね」ってあたしの頭を撫でた。


あぁ、やっぱドキドキする…。

田中先生に言われた言葉が不安だけど、あたしはやっぱり菊池先輩を信じたい。




…っていうか、星河先輩にフラれた直後は「もうダメかも」って思って落ち込みまくっていたけど、

菊池先輩のおかげで今はもうそれもほとんどない。

あたしは頭に感じる菊池先輩の優しい手に幸せを確かに感じると、

ようやく二人で校門を抜けた。





…しかし、そんなあたし達二人の姿を、

校舎の中から田中先生が見ていることに気付かずに…。



「あーあ…せっかく忠告してあげたのに、夏野さん」



田中先生は独りそう呟くと、あたし達を見ながら不敵に笑った…。