へたれ王子



…演技…?



「演技って、菊池先輩が…?」



演技とかするの?

え…それってつまり、恋をしたフリってこと?


あたしが少し声を震わせながらそう聞くと、田中先生はあたしの言葉に頷く。



「そう。菊池くんなら、その演技くらい朝飯前だと思うけどな。

だってほら、菊池くんって、夏野さんの他にも仲の良い女の子いっぱいいるじゃない。

夏野さんが知らない間に、浮気の一つくらいしちゃってるかもね~」


「!!」



田中先生はそう言ってため息を吐くと、淹れたばかりのコーヒーを一口、口に含んだ。



…う、嘘。

嘘だ。

菊池先輩はそんな人に見えない。

だってあたしは、今までに何度も菊池先輩に助けてもらったりして…。

凄く信頼してる先輩だもん。



あたしがそんなことを考えながら俯いていたら、向かいに座る田中先生が再び口を開いて言う。



「…まぁ、信じられないのは当たり前かもね。だって菊池くんは、夏野さんには妙に優しいから」

「!」

「でも、菊池くんのソレは心に留めておいた方がいいよ。じゃないと、後で傷つくのは夏野さん、あなたなんだからね」



田中先生はそう言うと、あたしに向かって意味深な笑みを浮かべた。