…ってか、田中先生があたしを呼び出した理由って何だろう…?
もしかして、特に理由はなかったり…?
ただ雑談したかったから…とか?
そう思いながらもしばらくは田中先生と他愛ない話をしていたら、
ふいに田中先生があたしに聞いてきた。
「…っていうか、夏野さん。この前噂で聞いたんだけど…」
「?」
「三年の菊池大将くんと付き合いだしたって、本当?」
「え…」
田中先生は突然あたしにそんなことを聞くと、じっとあたしの返事を待つ。
何で…何でそんなことを聞くの?
そう疑問に思いながらも「…本当です」って躊躇いがちに言ったら、田中先生がため息を吐いて言った。
「…あたしがこんなことを言うのも何だけど、やめといた方がいいと思うよ」
「!」
「なんせ菊池くんって、いい噂全然ないから」
田中先生はそう言うと、ソファーから立ち上がってまたコーヒーを淹れる。
突然のそんな言葉にあたしは動揺を隠せずにいたけど、でもそれは高井さんや佐伯さんからも言われた言葉だから、そこまで驚いてはいない。
ただ、どうして教師である田中先生がそんなことを言うのかさっぱりわからなくて、あたしは少しだけ田中先生に恐怖を覚えた。
「…どうして、そんなこと言うんですか?」
あたしが声を震わせながらそう聞いたら、田中先生はコーヒーを淹れたカップを持ってまたソファーに腰かけながら言う。
「どうしてって、だって心配だもん。
夏野さんって真面目そうだから何だか放っておけなくて、嫌な目に遭ってほしくないんだよ」
「!」
「ねぇ、夏野さん。菊池くんは誰かを好きになるっていう演技が凄く上手いの。だから、容易に近づいちゃダメ」
「!!」
田中先生はそう言うと、そのカップを手にしたまま真剣なまなざしであたしを見つめた。

