へたれ王子




…………



そして、放課後。

一緒に帰る菊池先輩には生徒玄関で待ってもらって、あたしは早速田中先生がいる進路指導室に向かった。

一階に位置する進路指導室は人通りが少なく、放課後の今でも誰もいない。

だけど、ノックをしてそこに入ると田中先生が独りコーヒーを飲みながらあたしを待っている姿があった。



「…失礼します」

「どーぞ」



田中先生はあたしの言葉にそう言うと、あたしをソファーに座らせる。


何を言われるんだろう…。


そう思ってドキドキしていたら、田中先生があたしの向かいに座って言った。



「夏野さん、」

「は、はい!」

「…なんか、こうやって夏野さんと話をするのは新鮮だね」

「え、」



田中先生はそう言うと、かわいらしくニッコリ笑ってコーヒーを一口、口に含む。

一方、思ってもみないことを言われたあたしは、「そ、そうですね」と相槌を打つことしか出来なくて…。

愛想笑いをしていたら、田中先生が飲み干したコーヒーカップをテーブルの上に置いて、言った。




「ところで、あたしの授業どうかな?」

「…どう、っていうのは…?」

「わかりやすい?」



田中先生はあたしにそう問いかけると、少し不安そうにあたしを見つめる。


…何で、そんなこと聞くんだろう…?


そう疑問に思いながらも「わかりやすいですよ」って言ったら、田中先生は安心したような笑顔を浮かべた。



「そっか、よかったぁ…」