へたれ王子




そのシーンを見た瞬間、一瞬だけ俺の思考回路が停止する。

思わず俺が固まって二人を見ていると、やがて口を離した菊池君が、至近距離で茉友ちゃんに言った。



「…マジで、奪っちゃった」





…ウバッチャッタ…?





「じゃあ、俺帰るね」



「…、」



え…菊池君、何だったの今の。



「茉友ちゃんも、気をつけて帰りなよ」



いや、ちょっと待てって。菊池君!



心の中でそう叫ぶけど、もちろん菊池君は立ち止まることなく校舎を出て行く。




なんで?



「…っ…」



なんで今、茉友ちゃんにキスしたの?




だけどそんな菊池君を引き留めて問いただす勇気がない俺は、菊池君の背中を黙って見送ることしか出来なくて…。

そうしている間にも、すぐに菊池君の姿は見えなくなった。



…大事な彼女を、幼なじみに奪われたんだ…。



俺はそう思うと、ショックすぎて思わずその場で気を失った。