へたれ王子




早く離れろ!茉友ちゃんから離れろ!


そう思うけど、二人の距離は全くあかない。

ってか超近いまま動かない。

それどころか、茉友ちゃんも茉友ちゃんで離れようとしない。


あれ…茉友ちゃんの彼氏って俺じゃなかったっけ?


俺はそう思うと、ショックな気持ちのままじっと二人を陰から見つめた。





…そして、それからどれくらいの時間が経った頃だろうか。

いつの間にか柱に寄り掛かって寝そうになっていたら、ふいにまた菊池君の声が聞こえてきた。



「…少しは落ち着いた?」



その問いかけに、茉友ちゃんが慌てて言う。



「すっ…すみません!」



茉友ちゃんはそう言うと、ようやく菊池君から離れてくれた。



「っつか寝そうになってたでしょ。寝顔?可愛かったよ」



だけど菊池君はそう言って、茉友ちゃんに笑いかける。

あーもう、可愛いとかいちいち言ってあげなくていいから、



「か、からかわないで下さいよ」



その菊池君の言葉に、茉友ちゃんが照れたようにそう言う。


そーだ、そーだ。

多少女慣れしてるからって、そんなこと軽々しく言うなよな。


茉友ちゃんの言葉に俺が勝手に同意していると、やがて菊池君が言った。



「…ねぇ、茉友ちゃん」

「はい?」



俺は柱の陰に隠れてて何が起こったのか分からなかったけど、少しの物音が聞こえた後、菊池君が聞いたことのない声で茉友ちゃんに言う。



「わーい、奪っちゃった♪」