へたれ王子




するとまた、菊池君の優しい声が聞こえた。



「…俺、見てないから。好きなだけ泣くといいよ」



その言葉と口調が、余計に俺を苦しめる。


菊池君は、優しい。

なのに俺は何やってんだ?

まるで菊池君の方が…



茉友ちゃんの彼氏みたい。



そう思ってため息を吐く俺の後ろで、茉友ちゃんが菊池君に抱き寄せられているとは知らずに、俺は独りとことん落ち込む。


…凄いな、菊池君は。

俺とは大違いだ。



そう思っていたら、茉友ちゃんの声で「ありがとうございます」って聞こえてきた。

そしてその言葉に菊池君が、



「んーん。肩くらいいつでも貸すよ」



って優しく笑っている声が聞こえる。




…ってか、ちょっと待てよ。


“肩くらいいつでも貸す”?



「?」



どーゆーこと?


その言葉を疑問に思って、俺は勇気を出してそっと二人の様子を覗いてみる。

するとそこには、なんと菊池君が茉友ちゃんの肩を抱いて、その手で頭を撫でてあげている姿があって…

思わぬ二人の姿に、俺は思わず目を丸くした。



…はぁ!?何アレ!!



ちょっと菊池君、どさくさに紛れて何やってんの!!