へたれ王子




それからは、俺にしては珍しく校内を走って茉友ちゃんを追いかけた。

だけど茉友ちゃんは足が速いのか、もう既にいなくなっててどこにいるのか全くわからない。



どこ行ったんだよ…。



そう思いながら、生徒玄関に降りたときだった。



「(もしかして、あのまま帰っちゃったり…?)」



そう思ってそこに顔を覗かせようとしたら…




「茉友ちゃん?」




ふいに、菊池君の声が聞こえてきた。

しかも「茉友ちゃん」って言ったような気がする。

その声に俺は慌てて柱の陰に隠れると、独り耳を澄ませた。


…そこに茉友ちゃんがいるのか…?



そう思ってじっと聞いていたら、また菊池君が言った。



「どうしたの、独りで泣くなんて」



「!!」



茉友ちゃん、泣いてるの!?

…うわ、これは完全に誤解を招いたな。


そう思って両手で自分の顔を覆っていたら、茉友ちゃんが涙声で言う。



「いえ…ちょっと」



「…」



茉友ちゃん…俺のせいで、泣いてるのかな…。

いや、っていうか、絶対俺のせいだよね…。

きっとそれ以外ない。


だけどここで二人の前に登場する勇気がない俺は、柱の陰で座って二人の会話を盗み聞いた。