へたれ王子




それは本当に突然の出来事で、

あたしは一瞬何が起きているのかわからないくらいだった。


だけど口を離した時、菊池先輩は今度は普段通りの声で、

どこか切なくあたしに言った。



「…マジで、奪っちゃった」

「!…っ、」



その言葉に、身体が硬直する。

顔が熱くなって、思考回路が停止したまま動かない。


すると、その間に菊池先輩はあたしの肩から腕を離し、そこから立ち上がって言った。



「じゃあ、俺帰るね」

「…」

「茉友ちゃんも、気をつけて帰りなよ」



菊池先輩はそう言うと、すぐに生徒玄関を出て帰って行った。



その背中を見ながら、あたしは手の甲で口をそっと押える。




…キス、しちゃった。星河先輩より先に。




菊池先輩と…。