そんな私も……、他人事なんかじゃなく。


午後になると。


その、麗らかな…暖かさに。次第に…瞼が、重くなる。



耳に届いてくる訳のわからない英語が…、子守唄。




かくん、と首が下がって。

ハッと目を覚まして。


また……こくり、

ハッ……!!



ソレを何回か繰り返すうちに。


「船橋…、次、お前が訳してみろ!」



………!!!



突然の…、ご指名!


「……次?!次は……、えーと……。」


パラパラと教科書をめくっていくと、




カシャン、と……


お隣りから、音がする。




「………。寝てた。」



むくっと…頭をあげた、桐山。


拾ったシャープペンの先を、トントンと2回鳴らして。


「堂々と公言してんじゃないっ!」


先生のお咎めに…いしし、と、悪戯っ子みたいに笑う。



それから、もう一度。


ゴツゴツとした長い人差し指を…


彼のノートの上で2回。



トントンと…、合図。




「………あ…。」



その、ノートの端っこに…


走り書きのようにして。


お世辞にも上手いとは言えない文字が…連なっていた。




「………。『もし、もっと一生懸命に練習していたら、君はその試合で負けることはなかっただろうに。』」




……なんて…、嫌味な例文なの?



彼のノートを覗き見ながら、そう発言せざる得ない自分に…恥ずかしくなった。



「なんだ、わかってんじゃないか。そう…、If 主語+(助)動詞の過去形。if節は過去完了形になる。従って、If you had practiced harder, you wouldn't have lost the match.の訳は、今船橋の言った通りだが……、お前ら二人!そう言われないように…しっかり励めよ?…勉強も、だからな!」




「「………………。」」



私と桐山は顔を…見合わせる。



ほんの少し…、君の口角がキュっと上がって。




穏やかに見えたその表情が……


前を向くと同時に、いつものクールさが滲み出す。





……悪戯っ子みたいに笑ったり、

さりげに……助けてくれたり。



知らない君は……

まだまだ未知数で。




女の子達が騒ぎ立てるその理由が、


少しだけ……

ほんの少しだけ、わかった気がした。