カシャン…、と。



そんな音がして。



私は…現実へと、引き戻される。




珍しいことに…。




桐山の手から、シャープペンが滑り落ちていた。




先生が振り返るから、


「………。おっと…、落としちゃった。」


私はわざと身を屈めて…


床からペンを拾った振りをする。





きっと……疲れているのだろう。


チームの動きを把握しながら、新入部員への指示さえ…怠らない。


何処かで…息抜きだって、必要でしょう?



机の上に落ちたシャープペンを。



そっと…、彼の手の中に戻す。



指先の違和感に、ぴくりと反応したものの…。



瞼を閉ざしたまま、


こちらに気づくことも…なかった。