高校3年…、春…。
無事に進級した私達は、間もなく受験という壁に…ぶち当たる。
ぽかぽかと、春の陽気が。
日頃の疲れを……癒していく。
「………。しかし、まあ。よく堂々と寝れたもんだなあ…。」
クラス替えから…1週間。
偶然にも、同じクラス…
隣りの席になった桐山の頭を。
私は…じっと見つめる。
隣りになったからといえ、その差も、距離すらも縮まることはなく…。
会話さえままならない。
何故なら、バスケをしている時とは一変…!
暇さえあれば……
いつも、寝てばかりいるから。
あの機敏な動きは何処から来ているのか…?
全く、信じられないくらいだ。
彼の器用なプレーを物語るように、その寝かたは…妙に上手い。
授業中であれば、頬杖をついて、片手にシャープペンを握りしめたまま……。絶妙な態勢で…挑む。
「………。」
隣の席の…特権は。
うつむき寝入った彼の横顔を…そっと、覗き見れること。
太陽の光が窓から降り注いで。
彼の黒髪が…僅かに、焦げ茶へと変化する。
普段はどっちかというとつり上がった眉毛が…
少しだけ下がって。
相変わらず緩むことのない口元が…
ちょっと生意気にも見えて。
隙のない桐山の…そんな姿は、貴重でもあり…
微笑ましくもある。