「はああ~……何てことになってしまったの。」
3年生対2年生。男子部最後の交流試合の最中に……
私は大きく溜め息ついて。
その光景を……眺める。
背番号4、
我が校のキャプテンナンバーを身につけて。
桐山は……バックコートでパスを受ける。
3年生が…マンツーマンでのディフェンスに入り、パスコースを阻んでいるけど……?
「……。さあ…、どう出る?」
2年生チーム。
このゲームの司令塔は……ポイントガードである桐山。
彼がボールを持つ度に、私はいつも……ドキドキと心を躍らせられる。
それはまるで、パフォーマンスであるかのように……。予測不能な戦術で、周囲を魅了させてしまうのだから。
淡々と、……いとも簡単そうに。
「………!アイソレーション。(※)」
彼がボールをもって、僅か3秒にも満たないうちに…ゲームは始まる。
フェイスガードするディフェンスをあっさりとフェイクでかわすと。
大きな手に、吸い付くようにして…
ボールが、運ばれていく。
桐山お得意の…ドライブイン。
フロントコートに、彼の花道が切り開かれていくのを…
うっとりと見つめていたその瞬間。
「………あ。」
突然出現したディフェンスと…接触!
相手もろともに…転んでしまう。
女子部員からは……大きなブーイング。
「ディフェンスファウル~!」
「神田センパイ、ブロッキングですよ~!」
確かにその通りかもしれないけれど、どうやら女子は…桐山の味方らしい。
余りにも、責め立てるから、私はつい、立ち上がって…
「……今のは、桐山なら…避けられたかもしれないじゃん!」
先輩を擁護する。
「……菜穂、アンタどっちの味方よ?」
……!しまった。
男バスのメンバーは、試合を中断して…ポカンと私を見つめている。
そう……、桐山流も。
「もちろん、2年だけど……。」
だけど、彼だったら…あんなの見通して、突破口をきりだすことだって…出来るハズだもん。
「………。あんまりうるさいと、ベンチにテクニカルファウルくるよ?」
「……う……。そうきたか…。流石…キャプテン。冷静~…。」
「………。」
相手の女子は…一気に押し黙ってしまった。
「……。あ、どうぞ…、試合を続行してください。」
結局…、審判をしていた男子部監督は、ディフェンスのブロッキングをとって。
サイドラインからのスローインで試合は再開。
「………。確かに、桐山に限ったらそうかもなあ…。身内からの判断ならな?」
女子部の監督は、ははっと笑って…
試合の行方を追いかけていた。
(※マンツーマンディフェンスに対し、オフェンス力の高いプレイヤーが1対1でボールを運べるように、他のオフェンス陣が逆サイドに避けて行う戦術)


