肩をぽん、と叩かれて。
主将の熱が、その手のひらから……じんわりと伝わってくる。
もはや、拒否権など…ないのか?
拍手の渦の中で、襲ってくる目眩をこらえて…、何とか、皆の前に立つ。
無駄に口ばかりは達者で…、身体の動きが追い付かない。
そんなちぐはぐな私に…務まるのだろうか?
疑問符ばかりが浮かぶけれど、
誰も期待などしていないかもしれないけれど、
断る…勇気もない。
自分は大したプレーもできないのに、ついて来いだなんて…言えないから、
「精一杯…務めさせていただきます!…よろしくお願いします!」
そんな、ありきたりで無難な決意表明をして…
その場をやり過ごす。
そんな私の左隣りには……
いつの間にか、大きな…陰がさしていて。
ふと、横を見れば。
「…………!!」
男子バスケ部の…
桐山 流が、すぐそこに……。
「………。」
見上げる首が、痛くなるくらいに。
始めて横に並んだその光景が信じられなくて…
じいっと、じいいっと……
見つめる。
大きい癖に、小さな顔。
短めの黒髪。
バランスの良い整った目鼻立ちに…
薄めのセクシーな唇。
その口元が…
キュっと結ばれるようにしたまま、
無表情な顔で…彼は、私と向き合う。
さも、興味がなさそうに…
見下されてる感が…ハンパない。
「男子の新キャプテンは、桐山です!」
その場にいる全員が…納得しているかのように。
熱っぽい拍手が沸き上がるのは……きっと、
信頼の証。
私は、苦虫を噛み潰すような複雑な思いで……
立ち尽くしていた。


