『もう。何寝ぼけてんのよ。忘れたの?あんた先週、うちに引っ越してきたでしょ?東京の高校に編入するからって』


「え?」



さっきと同じ声のする方へと視線を向けると、そこにはここ1年ほど顔を見ていないような人物が立っていた。



「お、お姉ちゃん!?」


『はぁ…。頭働いてる?一晩寝て、記憶飛んでっちゃったわけじゃないよね?』


「え?あ、そ、そっか。思い出した!」



そう。私、藍田世玲菜(アイダ セレナ)17歳は、この遠い大都会、東京へ、新しい高校へ編入するため、引っ越してきたんだった。


そして今日がその、登校日初日であった。



「やばい!今何時!?」


『8時半。9時には授業始まるんじゃなかった?30分前にも起こしたけど、あんた適当に寝ぼけて返事したまま、また寝ちゃったのよ。私のせいじゃないからね』



4つ年上で、高校卒業と同時に東京に内定を決め、一人暮らしを始めていたお姉ちゃんの茉里奈(マリナ)は、ドット柄の可愛いマグカップにお湯を注ぎながら答える。



「うっそ!8時半!?遅刻しちゃう!!」



私は慌てて布団から飛び起きた。