それは俺が高校1年の時だった。


入学したての俺は、その学校に息苦しさを覚えていた。


俺が入学して間もなく友達になった祥太郎も同じ事を考えていたらしい。


「この学校ってさ、思ったよりも退屈だよな。」


「ああ。
なんつーか、何であいつらはそんなにも勉強が好きなんだ?」


俺らが通ってた高校はかなり賢かった。


皆が当たり前のように勉強できたし、そして高校生になってからも当然のように勉強してた。


だが恐ろしい事に、大半のやつは勉強と将来以外に興味がなかった。


テレビは見ない、ネットもしない、読んでいる本は堅い内容のものばかり…同級生が嫌いなわけではないが、なんとなく話しずらいなと思っていた。


それに比べ祥太郎や俺は、確かに勉強する事は嫌いではないが、テレビは見るし、漫画も人並みに読むし、放課後に遊んだりもする。


多分、普通の高校生だ。


でもこの高校だとそれが普通ではないらしい。


散りかけの桜を教室の窓から眺めながら、俺は思った。


面白い人いねえかな、勉強以外の何かが凄く好きなやつとか。


「そういや…あの子達って美人だよな。」


祥太郎が耳打ちする。


「あの子達って?」


「ほら、真ん中の列の後ろに座ってる2人組。」


俺は後ろをちらりと見る。


祥太郎が誰の事を言っているかは分かった。


でも、名前が分からなかった。


「って、結局女かよ。」


「結局ってなんだよ。
お前は可愛い彼女が欲しいとかねえのかよ。」


「あるにはあるって言っておこうかな。」


「なんだそれ。」


そりゃ彼女だって欲しいさ。


でも、あの2人のうちのどっちかを彼女にしたいとは思わなかった。


「昴って、モテそうなのに誰とも付き合わないパターンのやつか?」


「それはねえけど、好きにならないと付き合おうとは思わねえな。」


「モテそうは否定しないのかよ。」


そこは否定せずに流しておく事にした。


「俺は可愛い女子より、面白いやつに出会いたいんだ。」


祥太郎と友達になれて、俺は凄く嬉しいけど、高校生活で1人しか友達が出来なかったらちょっと悲しい。


出来ればあと2人は欲しい。


俺はそう願いながら教室を見渡したのだった。