教室に戻った時、ドアの近くに女の子が1人いた。


その子は何処にも座らず、キョロキョロしながら立ち尽くしている。


未来と同じ子かなって思った。


この子も今日初めて塾に勉強しにきた子だと。


なのに未来は、最初は話しかけようなんて思わなかった。


いつもは自分から言わなくても、絶対に誰かが声を掛けてくれてたから。


だから未来はその子を避けて、自分が鞄を置いた席に座った。


後ろの方に座っている他の子からは距離がある、前から2番目の窓側の席…そこは廊下側に立つ彼女とも遠かった。


結局その子は、ドアのすぐ傍の席に着いた。


勿論、周りに友達はいないから誰とも話していない。


賑やかな話し声が後ろから聞こえてくるのに、前の席は対称的に静かで…何だか違う空間にいる気がした。


その違う空間を共有しているからだろうか。


未来は廊下側にいる彼女が気になった。


大人しく、お人形ように座っているだけなのに…未来にはとても魅力的に見えた。


きっと未来とは全く違う何かを持っている子だと思った。


気付いたら、未来は立ち上がって彼女に近付き、彼女の横に立っていた。


そして自然と微笑み、こちらを向いた彼女に行ったんだ。


「もしかして、塾初めて?」


そしたら彼女は頷いた。


「うん。」


「未来もなんだ!
一緒だね。」