「だってあの日からちらちら夜久君のこと見てるし、好きだって気付いたのかなあって」
「.......見てないよ」
「説得力ないよ」
抵抗も空しく、一蹴されてしまった。
「まーた、なんかうじうじ考えてるんでしょ? ほれほれ、言ってみろ」
陽が落ちかけた放課後の教室にいるのはあたしと楓だけ。
今回は言おうと決めたあたしは口を開く。
「えっとね、ご想像の通り夜久君に助けて貰ったあの日、いろいろあって、夜久君が好きだと気付きました......」
「だからそれは知ってるって。いいじゃん、私は脈あると思うよ?」
「えっ、何言ってるの。あの夜久君がこんな凡人をだなんて、あり得ないでしょ?」
「それそれ、その考え方。雪穂は自己評価低すぎるんだよ。謙遜と卑下を履き違えたらだめだよ」
未だにあたしといて楽しいと言ってくれたのが夢なんじゃないかと思うくらいにはどうしてなのか分からないんだ。
そんなこと言われても分からないよ。
「.....うーん、いきなり自己評価上げろって言われてはい、そうですかって言えないのも仕方ないとは思うけどね。
でもさ、少なくとも私は雪穂のこと最高だと思ってるし、先輩達にどうしてあんな子が良いのなんて言われたら腹立つよ」


