「......あたしみたいな何の取り柄もない人間と、どうして話してくれるんだろう?って思わないわけじゃないです。でも、夜久君は自分の容姿の良さに驕って、誰かを貶めるような真似をする人と仲良くなりたくないと思います!!」


勢いのままに言いきったあたしは真っ直ぐ顔を上げる。


「なっ.......」


目を見開いて一瞬言葉を失ったのも束の間、先輩が怒りの感情の勢いのまま手を振り上げるのが見えた。

叩かれる、と身を強張らせたあたしは目を瞑る。

でも、一向に振り上げられた手が落ちてくることがない。

ゆっくり瞼を上げようとしたその時。


「碧海、帰ろう」


此処にいるはずのない人の声が聞こえた。

驚いて目を開けると、先輩の手を片手で止めている夜久君の姿があった。


「なんで、夜久君が......」


『いるの?』と聞く前にもう一度『帰ろう』と言われた。

あたしは訳が分からないままぎこちなく頷いて、あたしは急いでまだ取っていなかった手紙と靴を取る。

すると、夜久君に手紙だけ奪われた。


「碧海の言った通りです。これ、返しますね」


そう言って、リーダー格の先輩の前に差し出されるあたしに宛てられた手紙。