「すみません。驚いてしまったもので。私が碧海雪穂です」
震えそうになる声を必死に保って答えると、あたしに質問をしたこの集団のリーダーらしき綺麗な先輩が顔を歪めた。
「よくもまあ、ぬけぬけと言えるわね。あなたどんな入れ知恵使ったのよ」
腕を組んでふんぞり返る先輩に後ろの先輩方も同意の意を示す。
人の行動や言動に一つ一つに嫌味を言うような言い回しはあたしに圧迫感を際立たせた。
自分がどれだけ理不尽なこと言ってるか分からないんじゃなくて、どうでもいいんだろうというような質問の意味はきっと、答えても答えなくても正解はないということ。
学校と言う名の籠にいるあたし達にとって学年と言う名の序列の意味は大きい。
その一番上に君臨する先輩の女子の集団に、一斉に責め立てられるというのは余計に恐ろしくて堪らなかった。
その証拠に、もう12月なのに嫌な汗が背中を流れて気持ち悪いし、心臓が厭に煩くて仕方ないし、鉛のように固くなった足はもう動きそうにないし、口の中が乾いて張り付く感覚までする。
なんだなんだと野次馬根性を見せる生徒がちらほら出てきて、逃げ場を一つずつ塞がれている感覚が不安を煽る。
元々あたしは目立つのが苦手なんだ。
こんな変な目立ち方したらあたしはこれから、どんな顔をしてこの学校に来ればいいの?
泣きたくなる気持ちを抑えて、ぐっと唇を噛みしめる。


