「あなたが碧海雪穂さん?」
刺々しく放たれた質問に成程と納得する自分の冷静さが気持ち悪い。
予期こそしていたけれど今日だとは知らなかった最悪の日。
それは今日だったようだ。
下駄箱に入れられていたもの。
それは宛名も署名も書かれていない真っ白な手紙。
表だけ見ると害はなさそうだけど、中に入っているものはあたしへの注意勧告だ。
要約すると夜久君に近づくなというもので、始めて貰った日はこんなことが本当にあるんだなあなんて他人事のように思ったものだ。
夜久君と学校で話すようになって暫くしてから毎朝この下駄箱に入れられていた手紙の存在を知らなかったわけじゃない。
でも、今日は初めて放課後の下駄箱にも入っていたから驚いた。
この後ろの集団の手紙をくれた人達がどんな目的があってあたしに話しかけているのか手に取るように分かる。
そして、今日が人生で一番の最悪の日。
今日が楓の部活の日で良かった。
いや、全然良くないけど、すごく怖いしこれから何されるんだろうって足が竦むけど、楓まで巻き込むわけにはいかない。
結局は自分の起こした事態なのだから、自分でなんとかしないといけないんだ。
いつかどんな形であれ、こんな日が来ることを分かってて放置していたのは自分なんだから。
「質問に返事もしてくれないなんて失礼な子」
軽蔑するような視線を一身に受けつつ竦む足を必死に動かして後ろを振り返ると、憎しみに歪んだ顔をした3年生の先輩方がいた。
――本当に、どうしようもなく、あたしってばかだなあ。


