なんでそうなるんだ。
すぐに楓は色恋沙汰にしたがる。
あたしはそんなつもりないよ。
夜久君なんて女の子の憧れみたいな人好きになるなんて、そんな不毛な恋をするほどあたしはばかじゃない。
そんなことを思っていると楓がまた溜息を吐いた。
あーあ、そんなことしてると幸せが逃げちゃうんだ。
なんて思うあたしは少し呑気過ぎるかもしれない。
「雪穂は自己評価もう少し上げた方がいいよ」
「えっ、なんでそんな話になるの?」
話が飛躍しすぎてわけわかんない。
楓の言うことはいつも難しい。
「取り敢えず、今は好きじゃないってことは分かった」
綺麗に巻かれた卵焼きを口に運び、ゆっくり咀嚼してから楓は言葉を続けた。
「でも、絶対好きになるよ。私の予想通りならね」
それは確信にも似たもので、なぜかあたしの心の奥を鷲掴みされたような気分だった。
その後は違う話をしていたけど、なぜかお弁当に入っているコーンの入ったコロッケもあたしの好きなグラタンも全然味がしなかった。


