それほどまでに楓の言ったことはあたしにとって衝撃的過ぎて、すぐに咀嚼できるようなものではなかった。
でも、楓はそんな態度が気に食わなかったらしい。
「なにその日本語で話してください、みたいな態度」
訝しむような顔をする楓はいつものように意地悪を言うけど、あたしにはやっぱり聞かれたことが良く分からない......。
好きって誰が誰を?
あたしの心を見透かしたように楓はそんな疑問の答えをくれた。
「雪穂が、夜久君を、好きなんじゃないかって聞いてるの。違うの?」
「なんでそうなるの?」
「だって学校の人気者だよ? それだけ特別扱いされたら好きになってもおかしくないでしょ」
特別扱いっていうのはあたしと夜久君の関係のこと?
いやいや、別にあたしじゃなくても夜久君は一人一人の女の子のことを知るきっかけさえあれば友達になれると思うんだ。
だって、夜久君は夜久君の周りと何ら変わらなかったあたしのことを真っ直ぐ見て、話すのが楽しいと言ってくれる素敵な人なんだから。
「別に特別扱いはされてないと思うよ?」
素直に述べれば『ばかじゃないの』と、即一蹴された。


