人が殆どいないこの棟の3階は理科室や音楽室と言った所謂特別教室や選択教科の時に使う空き教室が並ぶところで、授業時間ではない今は人がいない。

人がいないということは、クラスのように暖房の類も付いていないわけで、当然他の場所より寒い。


「ごごご、ごめんね。最近いっつもここで」

「ほんとだよ。そんなに嫌なら夜久君と喋らなきゃいいのに。夜久君にもそう言われたんでしょ?」


喋らなきゃいいというのは、学校で夜久君と会話をしなければいいということだ。

あたしと夜久君は確かに前よりは仲良くなったけど学校で話し込んだりするわけじゃない。

なんとなく二人でゆったり話す方が良いから、学校でも話すけど多くのことはあの丘で話している。

だから楓は、わざわざあまり話さないのに学校で話してる姿を学校の子に見られて、敵を作らなくてもいいんじゃないかと言いたいんだろう。


 夜久君もまさかここまで騒がれると思っていなかったようだ。

暫くしてから嫌なら学校では話しかけないと言われたけど、それも違う気がする。

だって、友達と話すことはおかしいことじゃないでしょ?


「そうなんだけどさ、なんかそれ夜久君と仲良いって思われたくないみたいで失礼な感じしない? あんまり気持ちいいことじゃないと思うんだよね」