あの日からあたしと夜久君は晴れた日の夜、あの丘で会うという日々を繰り返していた。

と言っても、夜久君はずっとあの丘に通っていたのだから、あたしが押し掛けていると言った方がいいのかもしれない。

でも、夜久君は『暇な時は来ればいいよ』って言ってくれたから、その言葉に甘えさせてもらってる。

そんな理由から自然と仲良くなって、学校でも一言二言話すようになった。

それ自体はとてもとても嬉しいことなのだけど非常に困ったことが起きた。

いや、当然のように解りきったことで、覚悟していたつもりだった。


「あの子だよ。夜久君と偶に喋ってるの」

「えーっ、あの子が? なんだかぱっとしなくない?」


でも、その覚悟なんていうのは覚悟と呼べるものではなかったらしい。

話したこともない女の子達がひそひそと話す内容はあたしのことで、そして彼のこと。


「雪穂人気者になったよね」

「もうっ、楓酷いよー。あたしが人気なんじゃなくて、夜久君が、でしょ」


あたしは一つ溜息を吐いて、愉しそうに笑ってる楓を少し睨む。


「だって、あの夜久くんと雪穂が仲良くなるなんてねー。異色の組み合わせだよ?」


一番仲の良い楓が言うのだから、あたしのことなんて何も知らない夜久君に好意を寄せる人たちにとってみれば不平不満でいっぱいなのだろう。

そうじゃない人にとっても恰好の噂話と言ったところ。