でも、嵩広は私の足をひょいっと持ち上げて
堂々とそこを通りすぎて私をチラッと見た。
「衣乃は何でそこまですんの?
俺の何を知ってそこまで言えんの?」
「……………っ!」
私が嵩広に蹴りをいれようとした時には
もう嵩広は目の前から居なくなっていた…。
悔しい……悔しいっ!
絶対に次会ったとき、殴り飛ばしてやるっ!
私はそう思いながら自分の教室へ戻った。
きっと言い返す言葉を無くしてしまったからだ。
嵩広は間違っていない。私は嵩広の事情を知らない。
だから、何も……言い返せないんだ。
私は櫚子を呼んで、教室を出て歩いていった。


