「……衣乃…」
弱々しい声が背中から聞こえてきて
私は思わず後ろを振り返った。
目があった瞬間、私の心に火花が散った。
「嵩広っ…!」
私は思わず嵩広の方へとかけていった。
嵩広は傘もささずに濡れて下を向いていた。
そして小さな声で言った。
「まさかお前がいるなんてな…」
私は嵩広のその悲しげな顔に足を止めた。
嵩広は私の方を向くこともなく小さく言った。
「和兄……俺は衣乃を守れなかった。」
私はその言葉を聞いた瞬間、
思わず嵩広にキスをした。
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