なのに俺は………


「くそっ…」


小さな涙は俺の胸に溜まっていく。


俺はその涙を何処かへ捨てようと家を出た。


どれだけ卑怯だって嘆いたって

和兄はきっと俺を許してしまうんだ。


眩しく照りつける光だったあの頃の俺も

今じゃ光に出ることの出来ない影。


今年も衣乃といられるって思ってた。

ずっといられるって…そう思ってた。


どこにいても何をしてても

言えるはずがなかった。


失って初めて愛しいって意味を知った。


苦しいけど…自分の足で歩き出した衣乃は

辛い、悲しい、逃げ出したい、切ない。

それでも幸せになるための道を歩き出した。


そんな衣乃を俺は凄いって……

心から尊敬してるし…

好きなんだって気づいてしまったんだ。